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現地レポート

2015 君が創る 近畿総体(インターハイ) 大会6日目(最終日) 現地レポート -優勝を決めた“気持ち”の正体- RSS

2015年8月3日 11時51分

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 「平成27年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会 第68回全国高等学校バスケットボール選手権大会(インターハイ)」の優勝校が決まりました。男子は宮城・明成が初の(宮城県の男子としても初)、女子は愛知・桜花学園が4年連続21回目のインターハイ制覇を遂げました。
 勝者と敗者を分けたのは何だったのか――月並みなテーマですが、インターハイの最後の最後で現れたそれは、“気持ちの差”がだったに思います。もちろん、敗れた愛知・桜丘、岐阜・岐阜女子に「勝ちたい」という気持ちがなかったわけでも、それが終盤になって薄れたという意味ではありません。彼ら、彼女らの勝ちたい気持ちは優勝したチームと同じか、それ以上だったかもしれません。
 それでも最後の最後に現れた“気持ちの差”の正体とは――。

 宮城・明成のポイントガードを務めた#6納見 悠仁選手。男子U-18日本代表候補にも選出されるほどの選手ですが、実はポイントガードが本職ではありません。普段はシューティングガードを中心にプレイしている選手。それが大会前にポイントガードだった増子 優騎選手が戦線離脱することとなり、今大会はポイントガードで起用されました。
 納見選手は言います。

登録選手からは外れたがマネージャーとしてチームを支えた増子 優騎選手

登録選手からは外れたがマネージャーとしてチームを支えた増子 優騎選手

「正直なところ、増子が抜けた穴は大きかったです。でもそれをみんなで埋めようとしてくれました。ポイントガードのところだけでなく、三上(侑希)は今大会を通して相手からのプレッシャーがかなり厳しく、なかなかシュートを決めきれなかったけれど、増子に代わってスタメンに入った富樫(洋介)が3ポイントシュートを沈めることで、三上の不調を埋めてくれました。八村へのマークが厳しくなるところも、足立(翔)がリバウンドや泥臭いプレイでチームを助けてくれました」

 主力の一人がいなくなり、また誰かが不調に陥っても、チーム全員でカバーする。目の前で起こる状況に合わせて、柔軟に一体化する“気持ち”が、明成はどのチームよりも勝っていたのです。
 エースの#8八村 塁選手も「チームが試合を重ねるごとに成長していった」と言います。昨年から同じメンバーで戦っているチームのさらなる成長は、絶対的なエースにとってもすごく頼もしかったはずです。

「みんなうまくできていたと思う…三上以外は」

 明成の佐藤 久夫コーチは冗談交じりに、今大会を振り返ります。

「三上は少しやろうとする気持ちが強すぎたかもしれません。でもそうした経験をして選手たちはうまくなるものなんです」

 ポイントガードで起用された納見選手も、決勝戦の第3ピリオドあたりで少し集中力を欠いたと言います。そのために桜丘に点差を詰められたのだと反省をしていました。しかしそれも佐藤コーチの言葉を借りれば、納見選手を向上していくための貴重な経験と言えます。
 増子選手に代わってポイントガードをしたことを、納見選手もまた前向きにとらえていました。

「ポイントガードをやりながら、シューティングガードの役割もすることは大変でしたが、それができるようになれば、自分自身もっと向上できると思っています」

 状況の変化に対応し、それを向上心に昇華させようとする点でも、明成はインターハイ王者に相応しかったと言えるでしょう。

 続いて、女子の愛知・桜花学園のキャプテン、#4遠藤 桐選手は優勝を次のように振り返ります。

「チームとして得点力に波があるので、その点はこれから磨かなければいけないところです。でも今日の決勝戦だけに関して言えば、とにかくディフェンスで我慢して、みんなで声をかけあって乗り切ることができました。相手の心より、自分たちの気持ちのほうがタフにできたことが勝因だと思います」

 桜花学園も岐阜女子も、どちらも膠着状態から抜け出すための決め手を欠き、ロースコアの競り合う展開で時間だけが過ぎていった決勝戦。しかしその状況を動かしたのが、遠藤選手と#5矢田 真悠選手の3年生コンビでした。

「3年生で意地でも流れを桜花学園に持ってきてやる!」

 遠藤選手はゲーム終盤の大事な場面で、そう思っていたと言います。

#4遠藤 桐選手はコート内でもしっかりと盛り上げることのできるキャプテン

#4遠藤 桐選手はコート内でもしっかりと盛り上げることのできるキャプテン

「下級生たちが頑張っているのに、自分たちは何もできませんでした。このままじゃいけないって思ったんです。同点から抜け出す3Pシュートも、いつもなら変な力が入ってしまうのですが、今日は『勝ちたい』という気持ちで打って、決めることができました」

 今年の桜花学園は、チームを率いる井上 眞一コーチをして「桜花学園らしくないバスケットをする」と言わしめるチーム。絶対的な高さもなく、かといってアウトサイドからのシュート力が十分にあるわけでもありません。全員で走り勝つような速攻も、まだまだ成長過程です。
 それでも徐々にですが、選手の中に“プライド”に似た、強い精神力のようなものが芽生えてきたようです。

 遠藤選手もチームの変化を肌で感じています。

「春に行なわれた『全関西バスケットボール大会』では岐阜女子に負けたんですけど、そのときは自分たちのペースじゃなくなると、チーム内の雰囲気も悪くなる時間帯が続いていました。でも今日はいくらシュートを落としても、みんなで『ここから!』って言い合えていました。それが大事な場面でシュートを決めることができたんだと思います」

 常に注目を浴びる名門校にあって、彼女たちはその名に胡坐をかくことなく、自分たちの力を認識できたからこそ、大事な場面で結果を出すことができたのでしょう。
 ウインターカップの出場権は獲得できましたが、それまでの課題は山積しています。それらの課題を精神面とともにより磨いていけば、男子の県立能代工業以来、史上2度目となる「3年連続高校3冠」も決して夢ではありません。

 インターハイを終えた高校生たちは、国体を挟んでウインターカップを目指します。明成を止めるチームが現れるのか。桜花学園の連覇を阻止するチームはどこか――2015年の高校バスケットは、インターハイの終わりとともに、これからさらにヒートアップしていきます。

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2015 君が創る 近畿総体(インターハイ) 大会5日目 現地レポート ‐キャプテンたちの夏‐ RSS

2015年8月2日 13時05分

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 「平成27年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会 第68回全国高等学校バスケットボール選手権大会(インターハイ)」も大詰めを迎え、大会5日目はハンナリーズアリーナの1会場となり、男女準決勝が行われました。今年のインターハイ決勝カードは、男子が「明成(宮城)vs桜丘(桜丘)」、女子が「桜花学園(愛知)vs岐阜女子(岐阜)」となりました。この4チームは、他のチームに先駆けて、ウインターカップへの出場権も同時に手にしたことになります。
 あと一歩及ばなかったのが、男子の新潟・帝京長岡、京都・東山、女子の東京・明星学園、千葉・昭和学院です。敗れたチーム、そしてファイナリストも含めて、完成形には程遠く、まだまだ成長の余地を大きく残しています。中でもベスト4でインターハイを終えた4チームは、東山の大澤 徹也コーチの言葉を借りれば、「ここまで来たら、もう一つ上に行きたいという欲も生まれてきた」ことでしょう。冬に向けて、もうひとつ先の扉を開けるべく、また厳しい練習が始まります。

 チームを引っ張るキャプテンも、これまで以上に、ここからが正念場なのかもしれません。

「インターハイに入ってから左ヒザに痛みを感じ始めて、そのことが頭から離れず、精一杯のプレイをすることができませんでした」

 女子準決勝1試合目、桜花学園に【38-52】で敗れた明星学園のエースで、キャプテンの#4中田 珠未選手は自分の不甲斐なさに涙を流していました。
 それでも結成当初はなかなかまとまらず、選手同士で意見のぶつかり合いをしていたチームが、関東ブロック大会で茨城・明秀学園日立に敗れてから、少しずつ変化していったと言います。それまで流れが悪くなると声さえ出すことができなくなっていたチームが、徐々に声を出し始め、お互いにモチベーションを高め合える存在になっていったのです。

ヒザの痛みを抱えて、思い切りのよいプレイが出せなかった#4中田 珠未選手。

ヒザの痛みを抱えて、思い切りのよいプレイが出せなかった#4中田 珠未選手。

 今日の桜花学園戦では少しだけ後戻りをしてしまいましたが、改めて声を掛け合い、チームがひとつになることの大切さに、中田選手をはじめチームメイトが気づきました。涙のあとに、中田選手も、明星学園のチームメイトたちも、既に照準をウインターカップに向けています。

「私は自分が『ダメだ……』と思うと、自分のことで手いっぱいになってしまうところがあります。インターハイでも少しそういった部分が出たように思います。でもそんなときに椎名(眞一)コーチから『キャプテンなんだから、チームをどうするか考えなさい』と言われて、確かにそうだなって思いました」

 そう言って、中田選手は決意を新たにします。

「みんなは明星学園の選手ですが、私は選手である上にキャプテンでもあるから、これからは自分のことよりもチームを最優先に考えたい。普段の生活でも自分が『明星学園のキャプテン』だということを忘れずに、いろんな面で声をかけられるようになりたいです」

 準決勝の第3試合、男子の帝京長岡は、第1シードの明成を第3ピリオドの終盤まで苦しめながら、勝利に向けた次の一歩が出ませんでした。結果は【56-73】で敗れ、チーム初の全国大会決勝進出はウインターカップ以降に持ち越しとなります。

「シュートやパスのミスもありましたが、それ以上に自分たちの持ち味であるディフェンスの足が止まってしまいました。同時に集中力と声掛けも止まってしまいました」

 キャプテンの#4頓所 幹康選手は、ゲームをそう振り返ります。

 チームが始動して以来、頓所選手はキャプテンとしてチーム力を高めることに注力していたと言います。質的にも量的にも厳しい帝京長岡の練習を、頓所選手が先頭に立ちながら、全員で声を掛け合いながら乗り越えてきたのです。
 今大会でも、昨日の東京・八王子学園八王子戦のように相手チームの選手が「刺激になった」と認めるほどの強力なキャプテンシーを発揮していました。相手が明成でも、帝京長岡が一つになれば必ず勝てる。そう信じて戦っていましたが、最後の最後でそれをうまく出すことができませんでした。

一心になるべくチームをまとめあげた#4頓所 幹康選手

一心になるべくチームをまとめあげた#4頓所 幹康選手

「明成のシュートが入り出したときに声を出すことができなくて……負けているときこそキャプテンである自分が声を出さなければいけないのに、自分もみんなと同じように落ち込んでしまいました。自分だけでも声をかけるべきだったと思っています」

 それは決して簡単なことではありません。プロ選手であればそうしたメンタルの強さも求められますが、発展途上の高校生プレイヤーがそこまでできれば、それこそ「超高校級」と言っていいでしょう。
 しかし一方でそれに気づけたことは、今後の頓所選手にとって大きなプラス材料になります。

「新潟県には開志国際など強豪校がいて、ウインターカップへの出場権を獲得するのもすごく厳しいです。でもインターハイで経験した、自分たちのダメなところをしっかりと修正して、臨めればチャンスは十分にあると思います。特に自分は今大会を通して、大事な場面でミスが多かったので、ミスを減らしていきたいです」

 キャプテンだからといって、何か特別なことをしなければいけないわけではありません。むしろ、キャプテンとして特別なことをしようとするあまり、自分のプレイが疎かになっては本末転倒です。
 ただ、ほんの少しだけ周りに目を配り、気を配ることができれば、チームは一つになっていきます。キャプテンに選ばれる選手とは、バスケットの実力もさることながら、そうした周囲への目配り、気配りとプレイとを両立できると思われているからこそ、それに任命されたのです。

 明星学園の中田選手も、帝京長岡の頓所選手も、インターハイの大事なゲームではうまくいかなかったかもしれませんが、そのことを認識し、自覚できたことが大きな収穫だと言えます。
 夏の悔しさを受け止め、乗り越えたとき、キャプテンたちは今よりも一回りも二回りも大きな存在となって、ウインターカップに必ず帰ってきてくれるでしょう。冬はそんなキャプテンたちの顔つきにも注目です。

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2015 君が創る 近畿総体(インターハイ) 大会4日目 現地レポート ‐スコアラーからエースへ‐ RSS

2015年8月1日 14時01分

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「平成27年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会 第68回全国高等学校バスケットボール選手権大会(インターハイ)」は4日目を終え、男女のベスト4が決定しました。
 男子は明成(宮城)、帝京長岡(新潟)、桜丘(愛知)、そして地元・京都の東山。女子は桜花学園(愛知)、明星学園(東京)、岐阜女子(岐阜)と、昭和学院(千葉)です。
 結果的には大差になったゲームもありますが、それでもやはり全国のベスト8の戦いになると内容が濃くなっていくのがわかります。

 男子の準々決勝でそれを最も濃く出したのが、京都・東山と茨城・土浦日本大学の一戦でしょう。敗れた土浦日本大学の名将、佐藤 豊コーチに「39分30秒まで思い通りに進められていたのに、最後の30秒でやられてしまった」と言わしめたゲームは、東山の#13藤澤 尚之選手の3Pシュートで【88-87】となり、それが決勝ゴールになりました。

2年生ながらチームの得点源としてアタックし続ける#8杉本 天昇選手

2年生ながらチームの得点源としてアタックし続ける#8杉本 天昇選手

 土浦日本大学の#8杉本 天昇選手は、昨日の福井・北陸戦でも28得点を挙げ、勝利の立役者になった2年生のスコアラー。今日は序盤こそシュートが入らないシーンもありましたが、「練習中から松脇(圭志)さんと僕の2人のフォワードが得点を取るのが土浦日本大学の形」と、打ち続けることで徐々にリズムを取り戻し、最終的に23得点を挙げています。スコアラーがリズムを取り戻した土浦日本大学は、前半を7点リードで折り返しますが、後半、特にゲーム終盤になると徐々に選手たちの足が止まってきます。杉本選手もタフなシュートセレクションになって、得点が伸びていきませんでした。
 もちろん連戦の疲れもあったと思います。しかし、それ以上に終盤の杉本選手を苦しめたのは、東山への応援です。地の利と言えばいいのでしょうか、東山応援団の手拍子に会場の観客も合わせたことで、土浦日本大学にとっては会場が完全アウェイの雰囲気に包まれました。

 経験豊富な佐藤コーチこそ「そんなに気にならなかった」と一笑に付しますが、それまでアウトサイドから得点を重ねていた杉本選手は、

「最初は気にしないようにしていましたけど、終盤、東山への応援が頭に入ってきて、プレイしづらかったところもあります」

 と認めます。

 その上で冬に向けて、改めてスコアラーとしての決意を語ってくれました。

「もう一度基礎から叩き込んで、勝負どころでもしっかりと得点が決められる強い選手になってウインターカップに戻ってきたいです」

 ラストショットは少しタフな体勢でしたが、それでも「今日は自分のシュートが当たっていたので、打ちました」と言う土浦日本大学の2年生スコアラーは、まだまだこれからの成長が楽しみな選手です。

 もう一人、ゲームに敗れながらも、スコアラーとしての矜持を見せた選手がいます。東京・八王子学園八王子の#8多田 武史選手です。新潟・帝京長岡とのゲームでチームトップの28得点を挙げました。しかしこちらも終盤にタフショットが続き、【64-82】でベスト4進出を手にすることができませんでした。

「後半、チームの流れのなかでバスケットができず、1対1からのタフショットばかりになってしまいました」

 多田選手はそう悔やみます。

 実は、多田選手は、対戦相手である帝京長岡のある新潟県が出身地。「親にお願いをして(新潟)県外に出てきたのに、新潟のチームに負けるわけにはいかない」と、序盤から集中力を高めてプレイしていましたが、それだけに余計に終盤の失速を悔やんでいました。
 それでも「シューターが自由にプレイできる」という理由で、県外への高校、すなわち八王子学園八王子に進学し、その中で徐々に頭角を現してきました。今日は苦しい展開となりましたが、普段から「流れのなかでシュートを打つことを心がけている」シューターは、近年、留学生選手の活躍が増えてきている高校バスケット界において、数少ない日本人のスコアラーの一人と言っていいでしょう。3Pシュートだけでなく、ドライブやペリメータ―のジャンプシュートも確実に沈めて、八王子に欠かせないエースとなっています。

3Pシュートだけでなく、状況に合わせて得点パターンを変えてくる#8多田 武史選手

3Pシュートだけでなく、状況に合わせて得点パターンを変えてくる#8多田 武史選手

 今日のゲームは、右ヒザを痛めていたこともあり、得点差が開いたところでベンチに下げられてしまいましたが、それだけにケガをしっかりと治して、冬の巻き返しを期待したい選手の一人と言えます。それでも多田選手は反省の弁をこう語ります。

「後半になって足が止まってしまったので、最後まで動き続けられる体力と、シュートタッチに波がないように、もっとしっかり体を作りたい。チームとしては、苦しい時間帯にみんなで声を出し合って、しっかりとコミュニケーションを取れるようにしなければいけないと思っています」

 最後のコメントには、中学時代から知っている帝京長岡の#4頓所 幹康選手が試合中にしっかりと声を出し、チームをまとめていた影響もあって、出てきた言葉でもあります。

「いい刺激をもらいました」

 ゲームの終盤の勝負どころで、自らの意志で攻められ、かつチームを勝利に導ける選手がエースの呼ばれるに値します。だとすれば、土浦日本大学の杉本選手や八王子学園八王子の多田選手、そしてこの夏、大事な一本を落として悔いている選手にとって、冬までの日々はエースとしての覚悟を問われる道のりになりそうです。
 夏のスコアラーが、冬までにどのような成長を遂げ、“エース”となって戻ってくるのか――。敗れてもなお、楽しみな逸材たちです。

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