JBA

現地レポート

2015 君が創る 近畿総体(インターハイ) 大会3日目 現地レポート -“ルーキー“たちのはじめの一歩‐ RSS

2015年7月31日 13時27分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 「平成27年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会 第68回全国高等学校バスケットボール選手権大会(インターハイ)」の3日目が終わり、男女のベスト8が出揃いました。
 主だったところを記せば、男子は第1シードの宮城・明成が宮崎・延岡学園を破った一方で、昨日、第2シードの福岡・福岡大学附属大濠を破った福井・北陸が茨城・土浦日本大学に敗れました。これは波乱でも何でもなく、実力伯仲のチームが必死に戦い抜いた結果です。土浦日本大学も素晴らしいチームであり、スター選手も数多く擁しているだけに、明日の準々決勝、地元・京都の東山との一戦は注目です。
 女子は愛知・桜花学園、千葉・昭和学院、愛媛・聖カタリナ女子が順当に勝ち上がりましたが、第4シードの大阪・大阪薫英女学院は東京・明星学園に【50-71】で敗れ、インターハイでの幕を下ろしました。

 その大阪薫英女学院に“ルーキー”がいます。むろん、1年生を登録しているチームはすべてルーキーを抱えているわけですが、ここで紹介する“ルーキー”とはコーチのことです。安藤 香織コーチは今年の4月から大阪薫英女学院のコーチに就任しました。それまでは府立豊島のコーチとして「打倒、大阪薫英女学院」に燃えていたと言います。

「実は私が高校生のときに、大阪薫英女学院を破ってインターハイに出たことがあるんです。だから教員になってからも『打倒、私学』、『打倒、大阪薫英女学院』でずっとやってきました」

 しかし昨年、大阪薫英女学院を率いていた長渡 俊一コーチが亡くなり、その後を継いだ長渡 由子前コーチから「三顧の礼」で迎えられたと言います。

 「お誘いを受けてからずっとお断りしていたのですが、それでも何度も誘われ、私自身も『長渡先生が作られた大阪薫英女学院のバスケット部をここで潰すわけにいかない』という思いになり、お引き受けしました。これまでは大阪薫英女学院を破って『大阪一』を目指していましたが、これからは『日本一』を目指してみようと考え直したわけです」

伝統を引き継ぎつつ、新しいスタイルを築いていく、大阪薫英女学院の安藤 香織コーチ

伝統を引き継ぎつつ、新しいスタイルを築いていく、大阪薫英女学院の安藤 香織コーチ

 名門校の跡を引き継ぐのは決して簡単なことではありません。ましてやOGでない安藤コーチが引き継ぐのですから、大変なこともあったと想像できます。しかし「これまで倒すために大阪薫英女学院のバスケットを研究し続けてきた」という安藤コーチは、緻密な戦略・戦術を駆使した“長渡バスケット”を継承しつつ、ただし、それにこだわりすぎると「形だけのバスケットになる」と考えて、府立豊島時代から積み上げてき“スピーディーな展開のバスケット”も加えるようにしていると言います。
 今回のインターハイではベスト16で敗れてしまいましたが、コートに立つ選手たちが縦横無尽に走り続けている姿は、伝統を残しつつ、新しい一歩を踏み出す決意のようにも感じられました。

「大阪薫英女学院は勝たなければいけない、という周りからの期待を受けるチームです。当然プレッシャーはあります。でも一方で選手たちは純粋に日本一を目指してプレイしています。何かを目指す選手たちと一緒に戦うことは公立高校を率いていた時代と何も変わりません。彼女たちをサポートしながら、同じ目標に向かって彼女たちと一緒にチャレンジして、ウインターカップの舞台に戻っていきたいと思っています」

 
 また、神奈川・横浜清風は、インターハイはもちろんのこと、ウインターカップにも出場したことのない、いわば“全国大会のルーキーチーム”です。その横浜清風が昨日、全国常連校の福井・県立足羽を延長戦の末に破り、ベスト16に名乗りを上げました。そして今日、ベスト8進出をかけて就実と対戦し、【39-86】で敗れてしまいました。
 
 チームを35年間率いている出川 啓子コーチは、就実戦を振り返って、

「主力の1人がケガで出られなくなって、チーム全体が思うような力を出せませんでした。それでもインターハイを戦ってきた選手たちを褒めてあげたいし、いい経験ができたと思っています」

 選手層の薄さを悔やみながらも、晴々とした表情で答えてくれました。

チームが一体となって臨んだ初の全国大会。この経験を次につなげたい横浜清風

チームが一体となって臨んだ初の全国大会。この経験を次につなげたい横浜清風

 昨日の県立足羽戦については「勝たなければいけないというプレッシャーがなく、むしろ『やれるところまでやってみよう』という気持ちでリラックスできたことが、シュートの成功率につながったのだと思います」と勝因を述べ、そのうえで県立足羽のような全国トップクラスのチーム、もしくは選手と対戦することが、横浜清風にとって貴重な経験になったと続けます。
 どれだけ厳しい練習を課しても、全国のレベルがどのくらいなのかは実際に肌で感じなければわからないものです。それを実体験できたことこそ、今回のインターハイが全国大会のデビュー戦となった横浜清風にとって、大きな財産となったわけです。

「噂では、インターハイに出られなかった県立金沢総合がウインターカップに向けて猛練習に励んでいると聞きます。でもウチの選手たちも『負けない』という気持ちが芽生えてきていて、またウインターカップ予選に向けて練習から気持ちを盛り上げていくことができそうです」

 出川コーチがそう言えば、キャプテンの#4小針 麗良選手はこう継ぎます。

「今日は『楽しく、元気に、明るい』横浜清風のバスケットが出せませんでした。ケガ人が出たことや、昨日の疲労があったことも事実です。でも県立足羽に勝ったことは自分たちでもびっくりするくらいの結果で、自信になりました。ただそれを過信せず、また初心に戻って、チャレンジャーとしてウインターカップ予選に向かいたいです。そのときは今日出せなかった笑顔でプレイしたいと思います」

 中学時代にジュニアオールスターや全国中学校バスケットボール大会(全中)など、全国の舞台に立ったことのある選手がほぼいない横浜清風。出川監督の言葉を借りれば「無印の選手たち」が、初の全国大会で自ら得た自信をどのように生かすのか。ウインターカップの神奈川県予選は白熱したものになりそうです。

 どんな名将でも、どんなスーパースターでも、そしてどんな名門校であっても、まずはさまざまな「初めて」を経験して、今に至っています。初めての経験を生かすか否かは自分次第。今年のインターハイで「はじめの一歩」踏み出した選手、監督、チームの次の一歩に注目したいと思います。

[ 記事URL ]